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リースバックとリバースモーゲージ ― 似て非なる老後資金の落とし穴

寄稿:内外不動産価値研究会

自宅に住み続けながらまとまった資金をつくる手段として、リースバックとリバースモーゲージがよく並べて語られる。名前も響きも似ており、どちらも「持ち家の高齢者が老後資金を得る方法」として紹介される。だが中身は正反対だ。前者は自宅を「売る」契約、後者は自宅を「担保に借りる」契約であり、取り違えると老後の住まいそのものを失いかねない。

警戒すべきはリースバックである。

国民生活センターへの相談は2019年度の24件から2024年度239件へと5年で約10倍に急増し、契約当事者の約7割を70歳以上が占める。同センターは2025年5月に注意喚起を出しており、「朝10時から夜10時過ぎまで勧誘され、仕方なくサインした」「家賃が3年で約6万円から約11万円に上がり退去を迫られた」といった相談が寄せられている。中には認知症の父が戸建てを相場からかけ離れた400万円で売却していた例もある。

テレビCMの普及で参入業者が増え、相場より大幅に安く買い叩く「押し買い」も目立つ。売却価格を他社と比べさせず、他者に相談させないのが常套手段で、契約後に親族から「安すぎる」と指摘されて初めて気づくケースが後を絶たない。

リースバックは「売って、借りて、住む」仕組みで、自宅を業者に売却し、その代金を受け取ったうえで借り手として住み続ける。

売却なので現金が一度に入り、固定資産税や修繕費から解放され、審査も借入ほど厳しくない。ただし所有権は買主に移り、投資として買われるため売却価格は相場より低く抑えられ、家賃には利回りが乗る。

リースバックにする理由は、定期借家なら期間満了で更新を断られる恐れもあり、いったん売買が成立するとクーリング・オフは効かず、後戻りには高額な違約金がつくと買う側のメリットは多い。

売却価格が安く抑えられがちになる背景には、日本特有の事情がある。木造住宅の法定耐用年数は22年とされ、金融機関は築20年ほど、不動産会社の査定でも築25年前後で建物価格をほぼゼロと見なす。

物理的にはまだ住めても「評価」の世界では土地の値段でしか見てもらえない。手入れした中古がむしろ値上がりする欧米と異なり、日本は「つくっては壊す」を前提に建物を消耗品として扱う。この癖が、リースバックの買取額もリバースモーゲージの借入可能額も押し下げる。

一方のリバースモーゲージは、自宅を手放さず、担保に借りて存命中は利息のみ(または元金据え置き)を払い、契約者の死後に自宅を売却して一括返済する仕組みだ。この代表格の「リ・バース60」だ。「リ・バース60」は、2024年度に1297戸が利用、申込者の平均年齢69.5歳、平均年収403万円、年金受給者が過半を占める。平均融資額は約1667万円、月々の返済は平均4.2万円で、使い道は注文住宅の建築やリフォームが多い。また、相続人に不足分を負わせない「ノンリコース型」が99.7%を選んでいる。

ウィークポイントは、担保となるのが前述の通りは土地中心となるため、建物価値の割合が大きく資産性の読みにくいマンションは「対象外」や「都心の一定価格以上に限る」とされることも多く、都市部でこの壁にぶつかる人は少なくない。

両者に共通する最大の弱点は「長生き」だ。リースバックは売却金を使い切っても家賃の支払いが続き、値上げもある。

つまり、リバースモーゲージは限度額まで借りれば資金の蛇口が止まり、変動金利型なら金利上昇で利払いも膨らむ。老後設計で本当に怖いのは早死にではなく長生きであり、「平均寿命で足りるか」ではなく「95歳まで住まいと家計が保つか」で試算しておきたい。

リースバック、リバースモーゲージのどちらを選ぶか、その基準は明快だ。

施設入居一時金や借金の清算など、まとまった現金が今すぐ必要で出口が決まっているならリースバック。住み続けながら生活費やリフォーム費を少しずつ確保しつつも、自宅を子に遺すつもりがないならリバースモーゲージが向く。

とはいえ、いずれも「自宅を使った資金調達」のため取り返しがつきにくい。売れば戻せず、借りれば残高は積み上がる。

突然の電話や訪問に押されてその場で決めず、複数業者から条件を取り、家族に相談し、住み替えや通常売却、不動産担保ローンとも比べたい。迷った際は、ば消費者ホットラインに相談する方法もある。

似て非なる二つの契約は、老後の暮らしを支える道具にも、住まいを失う陥穽にもなる。分かれ目は、仕組みを正しく知り、自分の10年後から逆算して選べるかどうかにある。

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