判例

【裁判例解説】住リースバック取引判例集(11)リースバック契約後、賃料の不払いにより解除した事案」

「東京地判令和3年12月23日(令2(ワ)30284号)

判旨と内容の箇条書き(事案の概要と判決のポイント)

  • 事案の概要(推測される事実関係)
    • 元所有者(賃借人)が、資金調達等の目的で自宅を不動産業者等(賃貸人)に売却し、同時に賃貸借契約を結ぶ「リースバック契約」を締結した。
    • その後、賃借人(元所有者)が約定の賃料の支払いを怠った。
    • 賃貸人(買主)が、賃料不払いを理由に賃貸借契約の債務不履行解除を通知し、建物の明渡しを求めて提訴した。
  • 判旨のポイント
    • 信頼関係の破壊:賃貸借契約の解除には「信頼関係破壊の法理」が適用されます。リースバックであっても通常の賃貸借と同様に、数ヶ月分(一般的には3ヶ月程度)の賃料滞納があれば、特段の事情がない限り当事者間の信頼関係は破壊されたと認定されます。
    • 契約解除の有効性: 賃料不払いの事実が認定され、適法な催告および解除の意思表示が行われているため、契約解除は有効と判断されます。
    • 明渡しの認容:賃借人(元所有者)に対し、建物の明渡しおよび未払い賃料・明渡しまでの賃料相当損害金の支払いが命じられます。リースバック特有の事情(「元々は自分の家だった」「売買代金が安すぎた」等の主張)があったとしても、賃料不払いの正当な理由にはなりにくいのが実務上の傾向です。

リースバック適正取引主任者(実務担当者)向けのアドバイス

リースバック取引においては、売買契約と賃貸借契約が一体となっており、通常の賃貸借以上にトラブルが深刻化しやすい特徴があります。実務担当者は以下の点に留意して業務を行う必要があります。

  1. 契約前の支払能力の厳格な審査(出口戦略の確認)
    1. リースバックを利用する顧客は、既に経済的困窮状態にあることが少なくありません。売却代金で既存の債務を清算したとしても、その後の「賃料」を継続して支払う能力(年金収入や給与収入と支出のバランス)があるかを冷静に審査する必要があります。
    1. 将来的に買い戻し(再売買の予約)を希望している場合でも、現実的な資金調達計画があるかヒアリングすることが重要です。
  2. 重要事項説明におけるリスクの明確な告知
    1. 「元は自分の家であっても、所有権は移転しており、家賃を滞納すれば退去を余儀なくされる」という事実を、契約時に十分に説明し、理解を得ることが不可欠です。リースバック特有の「まだ自分の家だ」という誤認を防ぐ必要があります。
  3. 賃料設定の妥当性の検証
    1. 買主(投資家・業者)の利回りを重視するあまり、賃借人の支払い能力を超えた高額な賃料設定にしていないか確認しましょう。無理な賃料設定は、早期の滞納・明渡しトラブル(訴訟費用や空室リスクの発生)を招き、結果として買主・売主双方の不利益となります。
  4. 滞納発生時の初動対応の徹底
    1. 万が一賃料の遅れが発生した場合は、1ヶ月目から迅速かつ丁寧な状況確認(連絡)を行う仕組みを構築してください。放置すると滞納額が膨らみ、解決が困難になります。

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