研究・分析・提言

2027年4月施行「犯罪収益移転防止法」改正に伴う本人確認業務の変更点と実務への影響

027年4月1日より、犯罪収益移転防止法(犯収法)の施行規則が改正され、不動産取引等における本人確認(KYC/eKYC)のルールが厳格化されます。近年多発している精巧な偽造身分証によるなりすましや詐欺被害を防ぐため、従来の「画像アップロード」や「目視」による確認が原則廃止され、「ICチップの読み取り」がベースとなる新しい運用へ移行します。

本レポートでは、実務に直結する変更内容と、各社で進めるべき対応策についてまとめました。

1. 施行予定日

2027年4月1日

2. 非対面(オンライン)取引における変更点

オンラインでの入居申込や契約手続きにおける最大の変更点は、これまで主流だったスマートフォンカメラでの撮影方式が廃止される点です。

  • 画像アップロード方式(現行の「ホ方式」)の廃止
    • 運転免許証などの「券面画像」と「本人の顔写真(セルフィー)」を撮影・送信して本人確認とする方式は利用できなくなります。
  • 「ICチップ読み取り」への原則一本化
    • 今後は、マイナンバーカードを用いた「公的個人認証サービス(JPKI)」、または「ICチップ情報の読み取り+本人の顔写真(セルフィー)の送信(新ハ方式)」が原則となります。
  • 身分証コピー郵送の原則廃止
    • 本人確認書類の「写し(コピー)」を郵送で受け取る方法は原則として禁止され、原本の郵送などより厳格な措置が求められます。

3. 対面(店頭・訪問)取引における変更点

窓口や対面での契約業務においても、従来のアナログな確認方法が根本から見直されます。

  • 「券面の目視確認」の原則NG
    • これまでのように「免許証の表面・裏面を目視で確認する(またはコピー機で写しを取る)」だけでは本人確認として認められなくなります。
  • ICチップ読み取りの義務化
    • マイナンバーカード、運転免許証、在留カード等の「ICチップ付き・顔写真付き」の身分証を提示された場合、専用の機器等でICチップ内の情報を読み取り、画面に表示して確認することが原則義務化されます。

4. ICチップを読み取れない場合(例外措置)

すべての顧客がICチップ付きの身分証を持っているとは限らず、またシステム障害等で読み取れないケースも想定されます。その場合は、極めて厳格な代替措置(補完措置)を取る必要があります。

  • 顔写真のない書類(健康保険証など)やICチップのない書類での対応
    • 当該書類の提示を受けたうえで、顧客の申告住所宛てに取引関係文書を「転送不要郵便等」で送付し、居住実態を確認することが必須となります。
    • 手間とコスト、時間がかかるため、実務上はICチップによる確認を第一優先とする運用フローを構築することが現実的です。

5. 事業者が2027年4月までに準備すべき対応

制度開始に向けて、各社ではシステム面と業務運用面の両軸で準備を進める必要があります。

  1. 対面用機器の整備
    1. 各店舗や営業担当者向けに、ICチップを読み取れるICカードリーダーや、NFC読み取りに対応したスマートフォン等の端末を導入・配置する計画が必要です。
  2. オンラインシステムの刷新
    1. 自社アプリやWEB申込システムを利用している場合、JPKIやICチップ読み取りに対応した本人確認システム(eKYC)への改修・移行を進める必要があります。外部のeKYCベンダーを利用している場合は、今後の対応スケジュールを確認してください。
  3. 業務フローの見直しと社内教育
    1. 店頭マニュアルや、例外時(読取エラー時やICチップ非搭載書類の提示時)の対応ルールを策定し、現場の従業員へ周知・教育を行う必要があります。顧客に対する事前案内の内容(持参物の指定など)も見直しが必要です。

総括

2027年の法改正は、単なる手続きの変更にとどまらず、各事業者のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を事実上強制する内容となっています。直前でのシステム導入や機器手配はベンダーの混雑や在庫不足を招く恐れがあるため、早い段階からの現状把握と移行計画の策定を強く推奨いたします。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP