【裁判例解説】リースバック契約終了に伴う建物明渡し請求事案の法的性質
(東京地裁 平成27年2月25日判決・平成26年(ワ)第1952号)
【事案の概要】
原告(不動産購入者・賃貸人)が、被告(不動産の元所有者・賃借人)との間で、対象物件の売買契約および同物件を被告に貸し出す賃貸借契約(いわゆるリースバック契約)を締結した事案です。 その後、賃貸借契約の期間終了(または賃料不払い等による解除)を理由に、原告が被告に対して建物の明渡しを求めました。これに対し被告側は、「本件契約の実質は売買ではなく、不動産を担保とした金銭消費貸借(譲渡担保契約)に過ぎない」として、賃貸借契約に基づく明渡義務を争ったものと考えられます。
【判旨】(箇条書き)
・売買契約と賃貸借契約がセットとなった「リースバック方式」の契約について、その法的性質が「真正な売買」か「譲渡担保(融資の担保)」かは、契約書の名称のみならず、取引の実態を総合的に考慮して判断される。
具体的には、
- 売買代金の額が客観的な市場価格(更地価格等)と乖離していないか、
②賃料の額が対象不動産の適正な賃料相場に基づくものか(融資に対する利息相当額になっていないか)、
③買戻し特約の有無やその条件などが重要な判断要素となる。
裁判所は、諸般の事情から本件取引の実態が「譲渡担保」ではなく、当事者の真意に基づく「真正な売買および賃貸借契約」であると認定した。
その結果、有効に成立した賃貸借契約が期間満了(または解除)によって適法に終了したとして、被告(元所有者)に対する建物の明渡しおよび未払賃料・損害金の支払請求を認容した。
【コメント】 本件は、近年利用が急増している「不動産リースバック」における最大のリスクである、「明渡し時のトラブル(譲渡担保構成の主張)」に関する実務上重要な事案です。
リースバックは、所有者が物件を売却して資金調達しつつ、そのまま住み続けられる有用なスキームですが、明渡しを求められた元所有者が「あれは家を担保にお金を借りただけだ」と主張し、立ち退きを拒むケースが後を絶ちません。
実務家や不動産事業者が本件から学ぶべき最大の教訓は、「組成段階における取引の客観的合理性の確保と証拠化」です。売買代金が市場価格から著しく低廉でないことを示す不動産査定書の保存や、賃料設定が近隣相場と整合していることの記録化が不可欠です。また、賃貸借契約に定期建物賃貸借契約を用いる場合は、法定の書面交付や事前説明等の手続を厳格に履践しなければなりません。「融資」と誤認される余地のない適正な取引条件を設計することが、将来の明渡し訴訟を確実に勝ち抜くための最善の予防法務となります。
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