(東京地裁平成27年7月14日判決・平25(ワ)17124号、平26(ワ)1081号)
【事案の概要】
不動産の所有者が、その不動産を相手方に売却すると同時に賃貸借契約を締結し、そのまま占有を継続するリースバック取引を行った事案です。本件の契約には、将来不動産を買い戻すことができる「買戻特約」が付されていました。
その後当事者間で争いが生じ、本件取引の法的性質が「真正な不動産売買および賃貸借契約」であるか、それとも実質的には「不動産を担保とした金銭貸借(譲渡担保契約)」であるかが真っ向から争点となりました。
【判旨】(箇条書き)
買戻特約付売買契約の形式がとられていても、目的不動産の占有移転を伴わない(元の所有者が住み続ける)契約は、特段の事情がない限り、債権担保を目的とした「譲渡担保契約」であると推認される(最高裁平成18年2月7日判決の法理)。
最高裁判例は買戻特約付売買のみの事案であるが、本件のように賃貸借契約が同時に締結されているリースバックの事案であっても、その実質は最高裁判例の事案と同じと評価できる。
したがって、本件の賃貸借契約および買戻特約付売買契約というリースバック方式による契約は、真正な不動産売買ではなく「譲渡担保契約」であると認定された。
【コメント】
前回解説した事案(真正な売買と認められたケース)と対をなす、不動産実務において極めて重要な裁判例です。
実務上、リースバック契約において元所有者に将来の買い戻しを認める「買戻特約」や「再売買の予約」を付与するスキームは散見されます。しかし本判決は、売買+賃貸借という形式を整えていても、買戻特約があり、かつ占有改定(元の所有者がそのまま利用を継続すること)が行われている以上、原則として融資に対する「譲渡担保」とみなされるという厳格な判断を示しています。
取引が「譲渡担保」と認定された場合の実務的インパクトは甚大です。不動産事業者(買主)は、賃借人の債務不履行時に単純な「建物の明渡し」や「所有権の確定的な取得」を主張できなくなります。担保権の実行として、不動産を適正な時価で評価し、貸付元本・利息相当額を差し引いた残額を元所有者に返還する「清算手続」を行わなければなりません。
実務的な対策として、真正な不動産取引としてリースバックを組成する場合には、安易に買戻特約を付与しないことが原則となります。仮に将来の買い戻しニーズに応える場合でも、買戻価格を「投下資本+利息」の計算ではなく「将来時点での市場価格」に設定するなど、実質的な金融取引(借金)と見なされないための極めて慎重な契約設計が不可欠です。
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