判例

賃貸人が転貸・再転貸を承諾していた場合、再転借人に建物の明渡しを求められない

事件概要:

サブリース契約が更新拒絶により終了した際、賃貸人が転貸・再転貸を承諾していた場合、信義則上、再転借人に建物の明渡しを求められない(対抗できない)とした裁判例です。

判決裁判所:

最高裁判所第一小法廷

判決年月日:

 平成14年(2002年)3月28日

事件の経緯:

 ビル所有者である賃貸人Yさんは、ビル管理業者Aさんの勧めによりビルを建て、Aさんに一括して貸し出しました(期間10年)。Yさんは、Aさんが第三者に転貸することをあらかじめ承諾していました。Aさんは敷地所有者Bさんに一階の一部を転貸し、さらにBさんは、YさんおよびAさんの承諾を得て、店舗を営む再転借人Xさんにその一部を再転貸しました(期間5年)。 その後、経営不振を理由に業者Aさんが更新しない旨をYさんに通知したため、YさんとAさんの原賃貸借契約が期間満了により終了しました。Yさんは他の転借人とは直接契約を結び直しましたが、条件が合わなかったXさんに対し、原契約の終了を理由に建物の明渡しと損害賠償を求めて裁判を起こしました。一審・二審はYさんの請求を認めましたが、再転借人Xさんがこれを不服として最高裁に上告しました。

争点:

 サブリース(一括借り上げ・転貸)方式の建物賃貸借において、中間に入る業者(賃借人)の更新拒絶によって原賃貸借契約が満了終了した場合に、ビル所有者(賃貸人)が信義則上、その終了を理由にして再転借人に対して建物の明渡しを請求(対抗)できるかが争われました。

裁判所の判断(結論と理由): 【結論】 最高裁判所は、二審判決のうちXさんに建物明渡しを命じた部分を破棄し、賃貸人Yさんの明渡請求を「棄却(再転借人X側の勝訴)」しました。

 【理由】 原賃貸借契約は、最初から業者Aさんが第三者に転貸して収益を上げることを前提に結ばれており、Yさんの承諾も自らは使わないAさんに転貸させつつ自身も安定した賃料を得るためのものでした。また、Xさんの再転貸借もこの目的のもとでYさんらの承諾を前提に結ばれたものです。 このような状況では、Yさんは単に再転貸を許しただけでなく、原契約の終了に加担してXさんの占有の原因を作ったと言えます。したがって、Aさんの更新拒絶で原契約が終了したとしても、Yさんは信義則上、契約終了をもって再転借人Xに対抗することはできず、Xはそのまま使用を継続できると判断しました。

この判例が示す判断基準・法解釈:

 サブリース形態の賃貸借において、所有者(賃貸人)が第三者への転貸・再転貸を前提として契約を結び、これを承諾・加担していた場合、サブリース業者の都合で原契約が終了したとしても、賃貸人は信義則上、再転借人(エンドユーザー)に対して契約終了を主張して退去を求めることはできないという判断基準を示しました。これにより、転貸・再転貸スキームにおけるエンドユーザーの使用権限が法的に保護されることになりました。

実務上の留意点(この判例から企業や個人が注意すべきこと):

  • ビルオーナーや不動産企業側:サブリース方式で物件を運用する場合、サブリース業者との契約が終了しても、オーナーが承諾していた転借人や再転借人を一方的に追い出すことはできません。業者の撤退や倒産リスクを見越して、原契約終了時に転借人との直接契約へスムーズに移行できるよう、あらかじめ契約書等で取り決めをしておくことが極めて重要です。
  • 店舗やオフィスの借主(個人・事業者)側:間に入る業者や転貸人が存在するサブリース物件であっても、ビル所有者が転貸・再転貸を承諾している場合は、業者間の都合で原契約が終了したからといって直ちに立ち退く必要はありません。オーナーに対して「信義則」に基づき使い続ける権利(使用収益権)を主張できる点を知っておくことが大切です。

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