判例

【裁判例解説】住宅リースバック取引判例集(8)事業用定期借地権付建物の信託譲渡・リースバックの有効性と解除

(最高裁 令和4年7月12日決定・令和4年(オ)第269号、令和4年(受)第332号)

【事案の概要】

事業用定期借地権(借地借家法23条)が設定された土地上の建物を所有する事業者(借地権者)が、資金調達を目的として、当該建物を信託銀行等に信託譲渡(受託者への所有権移転および借地権の譲渡)したうえで、受託者から建物をリースバック(賃借)して事業を継続した事案です。

その後、事業者がリースバックの賃料支払いを滞納したため、受託者(賃貸人)側が賃貸借契約を解除し、建物の明渡し等を求めて提訴しました。事業者側は、事業用定期借地権の特殊性や信託目的などを理由に、契約スキームの有効性や解除の適法性を争い、最高裁まで争われました。

【判旨】(箇条書き)

事業用定期借地権付きの建物を信託譲渡し、これをリースバックするスキーム自体は、地主の承諾等の法的な要件を満たしている限り、有効な取引として認められる。

信託譲渡に伴い、建物の所有権および対象土地の借地権は受託者に適法に移転しており、当事者間で締結されたリースバック(建物賃貸借契約)も有効に成立している。

リースバック契約において賃料の不払いが継続し、当事者間の信頼関係が破壊されたと認められる場合、賃貸人(受託者)は適法に契約を解除し、建物の明渡しを求めることができる。

対象が事業用定期借地権という特殊な権利形態であることや、信託譲渡という金融スキームを用いていることは、賃料滞納に基づく解除の有効性を妨げる理由にはならない(上告棄却)。

【コメントおよび適正取引主任者へのアドバイス】

本件は、個人の所有権不動産ではなく「借地権付きの事業用物件」におけるリースバック、しかも「信託譲渡」を用いた高度なスキームに関する事案です。借地権上の建物をリースバックする場合、所有権の移転(借地権の譲渡)と賃貸借(借地権の転貸)が二重に発生するため、権利関係が極めて複雑になります。

《適正取引主任者へのアドバイス》

適正取引主任者の皆様は、借地権付き物件のリースバック案件を審査・組成する際、以下の点に細心の注意を払ってください。

地主の承諾要否の厳格な確認:建物の所有権移転は「借地権の譲渡」を伴い、リースバックは「借地権の転貸」を構成します。無断譲渡・無断転貸として地主から借地契約そのものを解除されるという致命的リスクを防ぐため、事前の地主承諾(民法612条)の手続漏れがないか、書面審査を徹底してください。

スキームの複雑性と説明責任:信託を用いたリースバックは、権利関係(委託者、受託者、受益者、地主)が多岐にわたります。滞納等の債務不履行時に「誰が明渡しを請求する権限を持つのか」を含め、契約時の重要事項説明において、顧客(委託者兼賃借人)に対し権利義務関係を明確に説明し、記録に残すことがコンプライアンス上極めて重要です。

住宅リースバック適正取引主任者→https://leaseback.sltcc.info/

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