判例

【裁判例解説】住宅リースバック取引判例集(6):地方公共団体によるセール&リースバックの適法性

(京都地裁令和元年5月24日判決・平成30年(行ウ)第8号)

【事案の概要】

地方公共団体(京都府城陽市)が、所有する大規模複合文化施設(文化パルク城陽)について、資金調達を目的としたセール&リースバック方式を導入した事案です。市は、当該施設を公の目的に用いる「行政財産」から売却可能な「普通財産」へと用途廃止手続きを行った上で民間へ売却し、同時に賃貸借契約を結んで施設の運営を継続しました。これに対し市民(原告)が、「実態として施設の利用状況は変わっておらず、行政財産の用途廃止は無効であり、本件契約は地方自治法および地方財政法に違反する無効な契約である」として住民訴訟を提起し、契約の適法性が争われました。 

【判旨】(箇条書き)

地方自治法上、行政財産は原則として貸し付けたり売り払ったりすることができないが、用途を廃止して「普通財産」とすれば売却等が可能となる。

ある行政財産の用途を廃止し普通財産とするか否かの判断は、行政の長(市長)の権限であり合理的な裁量に委ねられている。 

本件において、市長がリースバック契約の前提として行った行政財産の用途廃止決定は適法であり、対象施設は法律上「普通財産」となったと認められる。 

したがって、普通財産化された後に行われた売却および賃貸借契約(セール&リースバック契約)は地方自治法等の法令に違反するものではなく、有効であるとして原告の訴えを棄却した。

【コメントおよび適正取引主任者へのアドバイス】

本件は一般的な個人の住宅リースバックとは異なり、地方公共団体が公共施設を活用して資金調達を行うBtoG(企業対行政)取引におけるスキームの適法性が問われた特殊な事案です。しかし、「所有権を移転しながら、従来の利用実態を変えずに使い続ける」というリースバック特有の構造の有効性が、法令に則った適切な手続きの履践を前提に裁判所で真正面から認められた点において、実務上重要な意義を持ちます。

《適正取引主任者へのアドバイス》

本判決は直接的な住宅取引の事案ではありませんが、適正取引主任者の皆様は、以下の視点を事業用不動産や権利関係が複雑なスキーム組成に応用してください。

前提となる法的手続きの厳格な履践:本件で市側が勝訴した最大の要因は、「用途廃止」という大前提となる法的手続きを適正に履践していた点にあります。例えば、農地法上の制限や各種行政指定がある特殊な不動産のリースバックを企画する際は、取引の利用実態がどうであれ、まずは形式的な法的要件(用途変更や許可手続き)を厳格に完備することが契約有効性の絶対条件となります。

客観的合理性と透明性の担保:取引が単なる違法な資金調達や脱法行為と見なされないためには、関係法令を遵守した適正な手続きと、市場の客観的な不動産価格に基づく取引であることを、外部(債権者、株主、あるいは行政等のステークホルダー)に対して高い透明性をもって説明・証明できる社内体制を整えることが不可欠です。

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