判例

【裁判例解説】住宅リースバック取引判例集(5)三面関係(個人売却・法人賃借)における取引の実態と当事者の同一性

(東京地裁 平成31年4月18日判決・平成27年(ワ)第13991号)

【事案の概要】

個人(元の所有者)が自己所有の不動産を買主(不動産業者等)に売却し、買主は、その個人が代表を務める「法人」を賃借人として賃貸借契約を締結するという、いわゆる「三面関係(個人→買主→法人)」によるリースバック事案です。売主(個人)と賃借人(法人)が形式上異なるものの、実質的には個人がそのまま物件を使用し続ける状況において、取引の法的性質(真正な売買か譲渡担保か)や、借地借家法・消費者保護法規の適用を巡る当事者の実質的な同一性が争われました。

【判旨】(箇条書き)

売主が個人であり、賃借人がその個人の代表する法人であるという「三面関係」のリースバック取引において、契約の法的性質や効力は、形式的な名義のみならず、法人の実体や契約に至る経緯を総合的に考慮して判断される。

個人を賃借人とせず、あえて法人を賃借人とするスキームが、消費者契約法や利息制限法などの強行法規(消費者保護規定)の適用を潜脱する目的で意図的に組成されたものでないかが厳しく審査される。

資金の実際の流れや使途、物件の実際の使用状況(法人の事業活動に供されているか、個人の生活の本拠に過ぎないか)に照らし、本件取引の実態が評価される。

形式的に法人名義を利用したに過ぎず、実質的に個人との取引と相違ないと認められる場合、裁判所は実態に即して契約の効力(真正な売買か融資の担保か)を認定し、それに基づく明渡請求の適否等を判断する。

【コメントおよび適正取引主任者へのアドバイス】

リースバックにおいて、売主個人ではなく、その個人が経営する「法人」を賃借人とするスキームは実務上散見されます。法人の事業資金調達という正当な目的の場合もあれば、事業者側が消費者契約法の適用や「個人の自宅の明渡し」という高いハードルを回避(BtoB取引への偽装)する目的で用いるケースもあります。しかし、裁判所は「真の利用者は誰か」という実態を非常に重視します。

《適正取引主任者へのアドバイス》

適正取引主任者の皆様は、三面関係のリースバックを審査する際、以下の点に留意した指導を行ってください。

実態との整合性確認:賃借人を法人とする場合、その法人が事業活動を行っている実態があり、物件が法人の事業用(事務所等)として使われるのかを厳格に確認してください。実態が「個人の居住目的」であるにもかかわらず、法規制逃れのためにペーパーカンパニーを挟む組成は重大な法的リスクを伴います。

資金使途の明確化:調達資金の使途が「法人の運転資金」なのか「個人の生活費・債務返済」なのかをヒアリングし、証拠化してください。契約上の名義と利用実態に齟齬がないよう、フロント担当者へのコンプライアンス教育を徹底することが重要です。

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