研究・分析・提言

令和6年「空き家所有者実態調査」に基づく空き家問題の現状と当協会の分析~増加する相続空き家と老朽化への処方箋~

はじめに
近年、我が国の空き家問題は深刻さを増しており、総務省の直近の調査では全国の空き家数が約900万戸、空き家率は13.8%と過去最多を記録しました。倒壊の危険性、景観の悪化、防犯上の懸念など、地域社会への悪影響が各所で顕在化しています。

こうしたなか、国土交通省より「令和6年空き家所有者実態調査」の結果が公表されました。当協会(NPO法人日本住宅性能検査協会)は、第三者的な専門機関としての立場から本調査結果を項目別に詳細に分析し、今後の空き家対策に向けた見解をまとめましたので、ここに発表いたします。

1. 取得経緯の分析:約6割が「相続」による取得

調査結果によれば、空き家を取得した経緯の約6割が「相続」であることが明らかになりました。親や親族の死亡・施設入所などを契機に、実家を望まぬ形で引き継ぐケースが大半を占めています。

【当協会の分析】
事前の準備や話し合いがないまま相続が発生するため、新所有者自身も不動産の価値や維持管理の手間を正確に把握できていない傾向があります。結果として、売却・賃貸といった活用や、解体などの意思決定が先送りされ、長期的な「放置空き家」を生み出す根本的な原因となっています。

2. 建物の状態と建築時期:7割超が1980年以前の「築古・劣化」物件

空き家の建築時期に関する項目では、全体の7割超が1980年(昭和55年)以前に建てられた旧耐震基準の住宅であることが示されました。さらに、全体の7割以上において「腐朽・破損」など、目に見える物理的な劣化が存在しています。

【当協会の分析】
長期間放置された築古物件は、耐震性や断熱性といった現代の住宅性能基準を大きく下回っており、そのままの状態で中古市場に流通させることは極めて困難です。利活用するためには大規模な改修工事(リノベーション)が必要となり、多額の費用負担が発生します。費用対効果が見合わないため、結果的に「直すことも壊すこともできない」まま放置が進行している実態が浮き彫りになりました。また、近年頻発する自然災害において、これら老朽空き家が倒壊し、避難経路を塞ぐなどの二次被害をもたらすリスクが強く懸念されます。

3. 所有者の今後の意向と課題:「問題の先送り」と高い心理的ハードル

空き家の今後の利用意向については、半数近くの所有者が「当面そのままにしておく」「物置(セカンドハウス等)として利用する」と回答しており、抜本的な解決に踏み出せていません。具体的な行動を起こさない理由として、「解体費用などの資金不足」「家財道具の片付けが負担」「親族間の合意形成が困難」といった課題が上位に挙げられています。

【当協会の分析】
とくに「家財道具の残置」は、売却や解体を進める上での大きなボトルネックとなっています。また、更地にすることで固定資産税の住宅用地特例の対象から外れ、税負担が跳ね上がることへの警戒感も依然として強く、所有者の「とりあえず放置する」という心理的バイアスを強固なものにしています。改正空家法による「管理不全空き家」への指定リスクといった最新の制度変更が、所有者に十分に認知されていないことも先送りの一因と考えられます。

4. 当協会の見解と今後の提言

本調査結果の分析を通じ、空き家問題の解決には「適切な状況把握」と「所有者の背中を押す専門的なサポート」が急務であると当協会は考えます。以下の3点を強力に推進してまいります。

  • 建物の客観的な性能評価の徹底:
    空き家を「活かせるのか」「解体すべきなのか」を所有者自身で判断することは困難です。当協会が推進するホームインスペクション(住宅診断)等の客観的な性能評価を活用することで、建物の正確な状態や修繕コストを把握し、合理的な意思決定を促すことが重要です。
  • 「家の終活」の早期啓発:
    相続発生後では手遅れになるケースが多いため、所有者が元気なうちから家族で建物の将来像を話し合い、不要な家財の整理を段階的に進める「家の終活」を社会的に啓発していく必要があります。
  • 専門家連携によるワンストップ支援:
    不動産、建築、法律、税務など、空き家問題は多岐にわたる専門知識を要します。当協会は各種専門家とのネットワークを活かし、所有者がどこに相談すべきか迷わないワンストップの相談窓口機能の強化を提言します。

おわりに

「令和6年空き家所有者実態調査」は、老朽化した相続空き家が限界を迎えつつある日本の現状に強い警鐘を鳴らしています。NPO法人日本住宅性能検査協会は、今後も公正中立な立場から住宅の性能や状態を可視化し、安全で豊かな住環境の実現と空き家問題の解決に向け、社会的な責任を果たしてまいります。

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