第1章 総則
第1条(目的)
本ガイドラインは、サブリース(一括借上げ)契約において、賃貸人(以下「オーナー」)と転貸人(以下「サブリース事業者」)との間に存在する情報量および交渉力の圧倒的な格差に鑑み、サブリース事業者からの不当な中途解約を制限し、オーナーの投下資本および当初事業計画を保護することを目的とする。最高裁判所平成16年11月8日判決の補足意見が示した「衡平の原則」に基づき、信義則違反となる解約の基準および解約違約金の算定要件を定める。
第2条(基本原則:信義誠実の原則の適用)
サブリース事業者は、自らが企画・立案し、あるいは積極的に関与した事業収支計画(シミュレーション)に基づいてオーナーに多額の借財(アパートローン等)を行わせた事実を重く受け止めなければならない。事業の途上において、自らの経営事情や単なる市況の悪化を理由に、オーナーの当初収支予測に著しく反する一方的な中途解約を行うことは、信義誠実の原則(民法第1条第2項)に反するものとして厳しく制限される。
第2章 不当な中途解約の禁止と無効
第3条(信義則違反となる解約の無効)
以下の各号のいずれかに該当するサブリース事業者からの中途解約の申し入れは、特段の客観的かつ合理的な事由がない限り、信義則違反として無効とする。
早期の解約
契約締結(または建物の竣工)から起算して、事業計画上予定されていた初期の投下資本回収期間(例:法定耐用年数の半数、または最低10年間)を経過する前の解約申し入れ。
経営努力の欠如
サブリース事業者が、入居率向上のための広告宣伝、適切な募集条件の見直し等の企業努力を十分に尽くしたことを客観的資料をもって立証できない状態での解約申し入れ。
減額請求の代替手段としての悪用
サブリース事業者が申し入れた賃料減額請求が、衡平の見地から認められなかった、あるいは協議中であるにもかかわらず、それを回避する目的で行われる報復的または脱法的な解約申し入れ。
第3章 解約を認める場合の厳格な要件(解約制限)
第4条(解約の申し入れ期間)
サブリース事業者が前条の無効要件に該当せず、やむを得ず解約を申し入れる場合は、現行法の規定にかかわらず、少なくとも解約希望日の「1年前」までにオーナーに対して書面で通知しなければならない。これにより、オーナーが自ら新たな賃貸管理体制を構築する猶予期間を確保する。
第5条(解約条件としての違約金支払義務)
サブリース事業者側からの申し入れにより中途解約を行う場合、事業者は「衡平の原則」に則り、オーナーの当初収支予測および借入金返済計画を破綻させないための損害賠償として、以下の基準に基づく「解約違約金」を支払わなければならない。本違約金の支払いが完了しない限り、解約の効力は生じないものとする。
解約違約金の算定基準(以下のいずれか高い金額とする)
ローン残債補填基準
契約解約時点における、当該物件に関するオーナーの金融機関への借入金残高(ローン残債)の全額、または残存返済期間における元利均等返済額を安全に完済できるに足る一時金。
当初事業計画保証基準
当初提示された「長期事業収支計画書」において、解約時点から契約満了(または当初予定の一定期間)までにオーナーが得るはずであった実質的な予定収益(家賃収入から必要経費を控除した純利益)の現在価値合計額。
第6条(例外規定)
前条の規定にかかわらず、建物の滅失、オーナー側の重大な契約違反、または天災地変等によりサブリース事業の継続が客観的に不可能となった場合は、この限りではない。ただし、その立証責任はサブリース事業者が負うものとする。
第4章 紛争解決
第7条(ADR等の活用と説明義務)
中途解約の可否および違約金の算定に関して協議が整わない場合、サブリース事業者はオーナーの求めに応じ、第三者機関(サブリース専門ADR等)による調停の手続きに誠実に応じなければならない。また、事業者は本ガイドラインの趣旨を契約締結前に書面を用いてオーナーへ明確に説明する義務を負う。
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