【ご相談内容】(Q)
会社(自営業)の敷地に設置するカーポート型の太陽光パネルを契約しました。総額1,600万円のローンを組む予定で来月着工予定でしたが、業者への不信感が強くなり契約解除を申し入れました。
すると、業者から口頭で1,100万円近い違約金を請求されています。
契約書には「商品納品前の契約破棄は実費のみ」と記載されており、高額な違約金には納得できません。業者は「契約書にある通りだ」の一点張りです。
高額な違約金を払わずに解約するため弁護士を探していますが、「太陽光パネルに詳しくない」と数件断られてしまいました。どう対処すればよいでしょうか。
【回答】(A)
結論から申し上げますと、契約書の記載に反する不当に高額な違約金をそのまま支払う必要はない可能性が極めて高いです。
着工前・納品前の段階で、契約金額の大部分(1,600万円中1,100万円)が「実費」として発生しているとは到底考えられません。
焦って支払いや合意書へのサインなどはせず、以下の手順で冷静に対処してください。
1. 口頭での請求には応じず、「書面」で内訳を要求する(実費精算の原則)
契約書に「実費のみ」と明記されている以上、解約時に負担すべきは「実費精算が原則」です。
業者が口頭で1,100万円を請求してきても、まずは「請求額の根拠となる実費の詳細な内訳を、客観的な証拠(メーカーのキャンセル規定や請求書など)とともに書面で提出してください」と毅然と要求してください。
実はこの「実費精算の原則」は、アパート等の建築請負契約における着工前トラブルでも全く同じです。アパート建築の場合でも、着工前(材料の加工や現場の施工が始まる前)に解約する場合、負担するのは「それまでに実際にかかった設計・調査費用や、すでに発注済みで転用がきかない特注部材の実費のみ」を精算して解約できるケースが一般的です。
将来業者が得るはずだった利益を含んだような、法外な違約金を支払う必要はありません。
今回の太陽光パネルのケースもこれと同様であり、正当に証明された実費以外を支払う義務はないのです。
2. 事業者間取引(BtoB)の注意点を知る
「自営業の敷地への設置(事業用)」として契約している場合、原則としてクーリング・オフや消費者契約法による保護の対象外(事業者間取引)となるケースがあります。
しかし、たとえ事業者間取引であっても、実際の損害を大幅に超えるような法外な違約金は、民法上の「公序良俗違反(民法90条)」等により無効とされる可能性があります。
3. 適切な専門家・相談窓口へアプローチする
太陽光トラブルは建築・電気・契約法務が絡むため、一般の弁護士では敬遠されることがあります。
以下の窓口を活用し、まずは「法的・技術的な問題の整理」を行うことをお勧めします。
当協会(NPO法人日本住宅性能検査協会)へのご相談
当協会が監修する「太陽光発電アドバイザー」や専門相談員が、契約内容や現状の状況をヒアリングし、問題点の整理を行います。
必要に応じて、建築・不動産トラブルや企業法務に強い専門家(弁護士など)へのご案内や連携もサポートいたします。
ひまわりほっとダイヤル(日本弁護士連合会):
中小企業・個人事業主向けの弁護士電話相談窓口です。事業用の契約トラブルに対応できる弁護士を紹介してもらえる可能性があります。
【アドバイス】
まずはこれまでの経緯(いつ、誰と、どのようなやり取りをしたか)、契約書一式、業者からの見積書や図面などをすべて時系列で整理し、証拠として手元に保管しておいてください。
一人で抱え込まず、当協会までお気軽にご相談にお越しください。
着工・納品前に発生し得る「実費」の一般的な内訳
今回のケースは「4/22着工予定で、商品納品前」とのことですので、「施工」以降の費用(職人の人件費、足場代、重機の手配費用、商品の設置工事費など)は一切発生していません。
したがって、業者が請求できる「実費」は、契約から着工準備に至るまでの以下の項目に限られます。
1. 見積もり・契約段階
この段階での実費は非常に限定的です。
印紙代:
契約書に貼付した収入印紙代(契約金額に応じた法定費用。1600万円の契約であれば数万円程度)。
契約事務手数料:
契約書類の作成や事務処理にかかった人件費等(通常は数千円~数万円程度)。
2. 作業手順(着工に向けた準備・手配)段階
業者が「実費」として最も強く主張してくるのはこの段階の費用です。しかし、積み上げても1,100万円には到底届きません。
現地調査・設計費:
カーポートの設置やパネルの配置レイアウト作成、強度計算、配線ルートの確認などにかかった労務費や設計費用。
各種申請の代行費用(重要):
太陽光発電を設置する場合、着工前に「経済産業省への事業計画認定申請」や「電力会社への系統連系申請(接続契約)」などを行います。これらの書類作成・申請代行にかかった行政書士費用や社内人件費。
部材のキャンセル料(メーカー返品手数料):
すでに太陽光パネル、パワーコンディショナー、カーポートの部材などをメーカーに発注済みの場合、メーカーに対する「発注キャンセル料(返品手数料)」が発生する場合があります。
注意点: 業者は「すでに発注したから部材代の全額を払え」と主張するケースがありますが、太陽光パネルなどの汎用品は他の現場に転用したり、メーカーに返品したりすることが可能です。
全額が実費となるのは、その現場に合わせて鉄骨を特殊な寸法で切断・溶接してしまい、他に全く転用できない「完全特注品のカーポート」等の材料費に限られます。それでも1,100万円という金額は異常です。
なぜ「1,100万円」という数字が出てくるのか?
総額1,600万円の契約に対し、1,100万円の違約金(実費)というのは、客観的に見て以下のものが不当に含まれている可能性が極めて高いです。
本来得られるはずだった利益の全額:
「この契約が完遂していれば自社に入ったはずの利益」をそのまま実費として乗せている。
架空の損害やペナルティ:
実費ではなく、解約を阻止するための脅しとしての法外なペナルティ。
転用可能な部材の全額請求:
他に使えるパネルや機材の代金を「すでに発注したから」と全額請求している。
結論と今後の対応
上記の通り、着工・納品前の段階で正当に認められる実費は、「印紙代、図面作成費、申請代行費、メーカーへの正当なキャンセル料」などを合計しても、通常は数十万円、どんなに高く見積もっても百万円台の範囲に収まるのが一般的です(特殊な大規模設計等の例外を除きます)。
したがって、次に取るべき行動は以下の通りです。
「契約書に『実費のみ』とあるためお支払いする意思はありますが、1,100万円が実費であるとは到底考えられません。
つきましては、1,100万円の算出根拠となる『実費の詳細な内訳書(各メーカーからのキャンセル料請求書や、設計費用の明細などの客観的証拠を添付したもの)』を【書面】で提出してください。」
口頭でこう伝えるか、内容証明郵便などで送付し、相手に「何にいくらかかったのかを証明させる」ことが重要です。多くの場合、業者は合理的な明細を出せず、大幅な減額交渉に持ち込むための足がかりとなります。
その明細が出た段階で、当協会や弁護士などの専門家に改めて「この実費請求は妥当か」をご相談いただくのが最も確実な手順となります。
契約書に「解約・違約金」の記載がない、または不明確な場合の考え方
この場合、原則として民法の規定が適用されます。太陽光パネル設置やカーポート建築のような「請負契約」の性質を持つ取引では、以下のルールがベースとなります。
1. 業者は「実費」に加えて「本来得られるはずだった利益」も請求できる
民法(第641条)では、「仕事が完成する前であれば、注文者(お客様)は損害を賠償していつでも契約を解除できる」と定められています。
この「損害」には、これまでにかかった「実費」だけでなく、「この契約が完了していれば業者が得られたはずの利益(逸失利益)」も含まれると解釈されるのが一般的です。
2. それでも「1,100万円」は暴利であり、業者が立証できない可能性が高い
業者が利益分を請求できるとはいえ、業者の言い値がそのまま通るわけではありません。その損害額(実費+利益)がいくらなのかを客観的に証明する責任は、業者側にあります。
総額1,600万円の契約に対し、着工前に1,100万円の損害が出ていると主張する場合、材料費などの実費を除けば「利益率が50〜60%を超えている」という計算になります。
建築や太陽光業界の一般的な利益率は高くても20〜30%程度です。業者が「うちの利益率は60%だ」と主張しても、裁判等になれば客観的な合理性がないとして退けられる可能性が極めて高いです。
3. もし契約書に「高額な違約金(例:解約時は契約金の80%等)」が明記されていたら?
消費者ではなく事業者(自営業)としての契約の場合、原則として契約書に書かれた違約金条項は有効とされやすいです。しかし、あまりにも業界水準からかけ離れた暴利な違約金設定は、「公序良俗違反(民法第90条)」として無効、あるいは適正な金額まで減額される余地が十分にあります。
NPO法人日本住宅性能検査協会
・太陽光発電アドバイザー
https://nichijuken.org/photovoltaics/
・建築・不動産取引問題に関する第三者委員会
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