ペロブスカイト太陽電池研究会
1「再生可能エネルギーと水素」

「水素」は、再生可能エネルギーの基幹と位置づけられ、今最も注目されています。そこで「水素社会」について現在の概要を紹介いたします。主な内容は、①再生可能エネルギーと水素、②エネルギー安全保障、③カーボン・ニュートラルに向けたサプライチェーン、④水素社会のこれまで・いま・あした、⑤水素をつくる、⑥水素製造の課題などを予定しています。
✴✴✴✴再生可能エネルギーの供給・需要バランス✴✴✴✴
再生可能エネルギーには、「風力」「太陽光発電」等がありますが、いずれも供給(発電)と需要(使用)の間に、時間のズレがあり簡単に制御できず、どうしても時間のずれで余剰エネルギーができてしまいます。そのため全国で年間に約17億kWhの電力が余っています。なかでも九州では、年間10億kWhの余剰があります。発電コストを10円/kWhとすると、100億円になります。現在は、需要家に送電できなければ捨てるしかないです。今後再生可能エネルギーによる発電が伸びる中で、この供給と需要のギャップは大きくなります。
✴✴✴✴再生可能エネルギーを蓄える✴✴✴✴
供給と需要のバランスを解決する方法として「蓄電池」と「水素燃料」が考えられます。どちらも一長一短があります。
蓄電池の商社の情報では、九州で系統用蓄電池がかなり売れているということです。「蓄電池」は、手軽な方法で、蓄電効率も高いのですが、いくつか問題があります。AC〜DC〜ACに変換するときに電力ロスがでます。現在のリチウムイオン電池の寿命は、せいぜい10年です。加えてリチウムイオン電池は、電池の製造において多くのCO2を排出するため、必ずしも環境負荷が低いわけではありません。
そこで、いま取り組まれているのが「水素」です。余剰電力で水素を生成し、そのまま「貯える」「燃料電池にして蓄える」ことが考えられています。
✴✴✴✴水素のメリット✴✴✴✴
エネルギーとしての水素は、酸素と結びつけることで発電したり、燃焼させて熱エネルギーとして利用することができます。その過程ではCO2を出しません。また水素の原材料は水だけです。
水素の製造過程〜貯蔵〜配送などにはまだ多くの課題がありますが、解決の道筋も見えてきているようです。
2「エネルギー安全保障」
エネルギーを資源として見た場合、水素には2つの大きな特徴があります。1つ目は、さまざまな資源からつくることができます。水の電気分解はもちろん、石油・天然ガス・石炭など化石燃料、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなどからつくることができます。2つめは、エネルギーとして利用してもCO2を出しません。
✴✴✴✴脆弱な日本の一次エネルギー✴✴✴✴
日本は、一次エネルギーの90%以上を輸入する化石燃料に頼っています。特定の地域への依存度が高いため、国際情勢の影響を受けやすいなど安全保障の観点から常に不安定でした。
明治・大正期の一次エネルギーは、国内産の石炭でした。昭和にはいり石油へのシフトが始まり、当初は国産化と米国からの輸入がありましたが、1941年米国による石油輸出禁止が、ひとつの原因で太平洋戦争にまで至りました。
戦後は、1960年代から始まった高度経済成長のなかで石油・天然ガスへと依存度が高まりました。そのなかで1970代に起きたのがオイルショックです。多くの物価が高騰する大変なインフレーションが起きました。ついにはスーパーの店頭からトイレットペーパーがなくなりました。
状況は今も変わっていません。東北の地震で原子力発電が止まると、計画停電、生産調整の経済は大きな影響を受けてしまいます。このときもトイレットペーパーがなくなりました。
✴✴✴✴水素は多様な資源の利用が可能✴✴✴✴

水素は、さまざまな資源からつくることができます。下水汚泥、廃プラスチックなどの未利用エネルギーや、再生可能エネルギーなど、安価な資源から水素をつくり、エネルギーとして利用することができれば、コストを抑制しつつ、エネルギー調達先の多角化につなげることができます。
太陽光や風力などの再エネの導入が拡大することで、季節や時間帯によって使い切れない再エネから水素をつくるアプローチも可能です。化石燃料に頼らない日本が可能となります。
✴✴✴✴夢ではないエネルギー自給率100%✴✴✴✴
全国で洋上風力発電と共にソーラー発電が広がっています。しかし森林に設置するメガソーラーには問題点が多くあり、増やすことに慎重であるべきです。このなかで開発中のペロブスカイト太陽電池は、建物の壁面、ガラス面など未利用箇所での発電が可能になります。ドーム施設、工場の屋根、水処理施設などにも設置することもできます。電気エネルギーの地産地消をベースで、そこで生まれた余剰電力から水素を生成することで、化石燃料に頼らない社会の実現は夢ではないと考えます。
3「水素の利用 これまで・いま」
水素は元素番号1で、最もシンプルな元素です。これまで水素だけが独立して自然のなかで存在しているとされていませんでした。近年、水素も石油や天然ガスのように自然界で「天然水素」と呼ばれ、単体で存在していることがわかってきました。とはいえ、水素は生活のなかでは身近な存在ではありませんでした。
✴✴✴✴これまで✴✴✴✴
水素はこれまでも、産業分野で広く使われていました。製鉄所では、高炉に直接水素を吹き込む水素還元技術を開発して、外部から導入するエネルギーを軽減する技術を確立しています。アンモニア製造の過程では、水素が必要です。他にも工業分野でもいろいろ使われています。
誰もが目にするのは、ロケットエンジンです。ロケットは液体水素と液体酸素をベースに燃焼させて推力を得ています。しかし身近な存在ではありません。
✴✴✴✴いま、ひろがる水素社会✴✴✴✴

いま家庭で最も身近な水素は、エネファームです。エネファームは、都市ガス等から取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて、電気をつくり出します。このとき発生する熱でお湯を沸かし、給湯などに利用しています。エネルギーを有効活用するシステムです。
もうひとつ、水素燃料電池自動車(FCV)があります。TOYOTAのミライが有名です。今年2024年にホンダとGMが共同会社を設立し、燃料電池自動車を量産、日米で販売開始するようです。今後、水素の供給インフラなどの整備が必要ですが、産業で使われるフォークリフトや燃料電池バスに広がると考えられています。画像:東京ガスのHP
✴✴✴✴LCA(ライフサイクル・アセスメント)✴✴✴✴
EV(電気自動車)が、少しずつ増えています。北欧では80%がEVという国もあるようです。確かに、表面的には、EVは使用時にはCO2を発生させません。しかし本当に環境に優しいのでしょうか。
LCA(ライフサイクル・アセスメント)は、原料の調達から製造、流通、使用に加えて、廃棄、リサイクルに至る、ライフサイクル全体の環境への負荷を考える概念です。この視点でみれば、EVはリチウムイオン電池の製造・廃棄に、従来の内燃機関を、はるかに超える環境負荷があります。また、使用時の電気が化石燃料由来だと考えると、慎重に考えるべきです。
ヨーロッパでは、2030年にはEV以外の新車の生産をしないとしていましたが、最近になって方針を180度変えたようです。EVの問題点が明らかになってきたからと思われます。
今後はEVからFCV(燃料電池自動車)に、シフトして行くと思われます。
4「水素の利用 あした」
現在は、大量の水素を生産できていません。水素を使う技術もまだ発達途上です。民需はもちろん産業分野でも、これからです。そのなか、川崎重工、岩谷産業、三菱重工など多くの企業が次世代水素社会に向けて動き出しています。
✴✴✴✴水素ガスタービン✴✴✴✴
水素ガスタービンは、水素社会実現に向けエネルギーの低炭素化、環境保全に貢献する最先端の水素発電のキーです。 従来の燃料である天然ガスを燃焼時にCO2を排出しない水素に置き換えることで、燃焼後は水分のみとなるので温室効果ガスの排出を削減でき、世界規模での脱炭素化に大きく貢献できます。
✴✴✴✴水素発電✴✴✴✴
水素ガスタービンの開発の先に「水素発電」があります。すでにいくつかの実証実験が始まっています。神戸のポートアイランドで川崎重工が中心となって、2018年市街地における水素燃料100%の ガスタービン発電による熱電供給を達成しました。三菱重工は、水素製造からガスタービン発電まで一気通貫で検証できる発電設備の長期実証運転を実施しています。富士吉田市では、国内初の実証型水素専焼発電所を実施しています。水素発電は新たな発電所を建設する必要がないとされています。水素燃焼器を、それぞれ火力発電所に実装し実機実証を通して燃焼安定性を検証する 水素発電実機実証が進められています。
✴✴✴✴水素燃料航空機✴✴✴✴
水素を燃料とする航空機は、エンジンの熱効率を意図的に下げ、窒素酸化物の排出ガスを減らすことが考えられます。 これは最もクリーンなコンセプトです。

エアバスは水素を動力源とする独自の航空機「ZEROe」のコンセプト機を開発しており、デルタ航空と提携しています。ロールス・ロイスはeasyJetと提携し、燃料電池を活用する可能性を探っています。ボーイングも2008年に実験をして以降、水素の可能性を受け入れ始めています。
HONDA・JETのエンジンを製作している「GE Honda エアロエンジンズ」は、持続可能な航空燃料として「HEFA-SPK」(動植物由来の油を水素化処理して合成される航空用燃料を100%用いた航空エンジン「HF120」の試験に成功したと発表しました。
✴✴✴✴その他の用途✴✴✴✴
水素エンジンのタンカー、水素で走る鉄道、水素合成燃料、多様な活用の可能性があります。
5「サプライチェーン」
環境省は、カーボンニュートラルに向けたサプライチェーンとして、「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」を示しています。
✴✴✴✴つくる✴✴✴✴
「つくる」は、再生可能エネルギーによる水電解、副生ガス精製、改質生成の3つに分けられています。
再生可能エネルギー「風力発電」「太陽光発電」などによる水電解が理想的ですが、大量生産技術の開発はこれからです。苛性ソーダや塩素ガスを製造する時に、副次的に水素が生産されます。以前は使い道がなく捨てていましたが現在は有効利用されています。
改質生成は、家畜糞尿・下水道汚泥より発生するバイオガス(メタン)を改質する方法と、化石燃料から水素を取り出す方法があります。大量の水素生成が可能ですが、CO2が出るという問題がのこります。
✴✴✴✴ためる・はこぶ✴✴✴✴

水素は気体のままでは、軽いのですが容積が大きくなって「ためる・はこぶ」のが難しい物質です。そこで「圧縮水素」「液化水素」「メタン・アンモニア・有機ハイドライド等」にする方法があります。輸送方法は、国内では、圧縮水素トレーラー、液化水素ローリー、パイプライン、海外からは、液化水素輸送船を利用します。
研究が進められているのが「水素吸着合金」です。水素吸蔵合金は、自体の体積よりも1,000倍以上の体積の水素を内部に貯蔵できるという特徴があります。燃料電池自動車や家庭用燃料電池など、さまざまな分散型エネルギーシステムにおいて、水素を貯蔵する媒体として使用が可能です。水素吸蔵合金であれば普通のトラックにも積めます。
✴✴✴✴つかう✴✴✴✴
水素エネルギーのメリットは、地球環境にやさしいことやエネルギー自給率を向上できること、災害に強いなどがあげられます。しかし水素エネルギーの普及には時間がかかっています。理由は、まだ多くの技術開発が必要なこと、「水素ステーション」などのサプライチェーン、供給のインフラ整備を整える必要があります。
6「水素の色」
すでに述べましたように、水素は、電気分解で、水から取り出すことができるのはもちろん、さまざまな資源からつくることができます。水素は製造過程から、いくつかの色に分けて分類しています。
✴✴✴✴グレー水素(ブラック・ブラウン)✴✴✴✴
グレー水素は、天然ガスや石炭などの化石燃料を利用して作られる水素です。 製造過程では多くのCO2が大気中に排出されます。 そのなかで石炭を使用したのがブラック、褐炭を使用したのがブラウン、天然ガスを使用したのがグレーと細分類しています。IEAによれば、その生産量は全世界の約80%にのぼります。
✴✴✴✴ブルー水素✴✴✴✴
製造方法はグレー水素と全く同じですが、ブルー水素は、生成時に発生したCO2を大気中に排出することなく回収し、安全な場所に貯蔵されるか、産業目的で原料として使用します。
日本とオーストラリアは、オーストラリアの低品質の褐炭から生成する技術を開発し、LNG船で日本に運ぶようになりました。回収された二酸化炭素は当面は地下に貯留します。将来は利用をするとのことです。ブルー水素は大量生産が可能というメリットもあり、今後が期待されています。
✴✴✴✴グリーン水素✴✴✴✴
太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使って電気分解して生成した水素をグリーン水素と呼んでいます。製造過程で炭素が一切でないため、最も理想的な水素といえるでしょう。ただ残念ながら、現時点では大量生産が難しいのが現状です。
✴✴✴✴ホワイト水素✴✴✴✴
水素も石油や天然ガスのように自然界で「天然水素」と呼ばれ、単体で存在していることがわかってきました。それも推定されていた以上の水素が地中に眠っていることが確認されました。 地中を採掘することで比較的容易に入手することができ、世界各国が地中水素の活用に乗り出しています。コストパフォーマンスも高く、グレー水素を下回る、1ドル/kg以下になるものと考えられています。ただし、世の中での利用を広めるためには、採掘にあたって環境に及ぼす影響について、もう少し詳しく調査する必要があります。
7「太陽光発電由来の水素」
化石燃料やメタンガスなどから水素をつくる改質法は、すでに工業分野で広く利用されています。それ以外に水を電気分解して水素をつくる製造方法があります。再エネ由来の電力を利用すれば、グリーン水素をつくることができます。ただ、水を電気で分解するには大規模な量の電力が必要となるため、できるかぎり安価な電力を使用することが課題です。
✴✴✴✴2つの水電解方法✴✴✴✴

実用化されている水電解装置には、「水酸化カリウム強アルカリ溶液」を使用する「アルカリ型水電解装置(AWE)」と、純水を使用する「固体高分子型水電解装置(PEM)」の2種類があります。福島で実証が進められているのはアルカリ型(AWE)で、山梨県でNEDOによる実証が進められているのが固体高分子型(PEM)です。コストや稼働時間の観点からはアルカリ型のほうがすぐれており、気象に大きな影響を受ける再エネにたいする柔軟性やコンパクト化の観点からは固体高分子型がすぐれているとみられています。
✴✴✴✴生成コストの削減が課題✴✴✴✴
経産省によると、水素による発電コストは現在1kWhあたり97円と、液化天然ガスの7倍です。グリーン水素製造の再エネコストも割高です。水素の普及にはコスト7割削減が必要です。
東京ガスは共同で低コストのグリーン水素を製造するための装置開発を始めました。水の電解装置は従来の厚い部材を部材を薄膜にして高速生産することでコストを引き下げようとしているます。「1Nm330円という政府のコスト目標を達成し、将来は更に低減する」とのことです。
NEDOは2014年度から水素エネルギーシステムの技術開発やサプライチェーンの構築、水素を燃料とする発電システムの開発に向け、さまざまな助成事業を展開しています。
✴✴✴✴水素関連の技術力は日本が世界のトップ✴✴✴✴
日本はこれまで、水素関連の技術力で世界のトップを走ってきました。論文も日本は2位の中国、3位の米国を大きく引き離してトップでした。
世界経済の中で日本の地位低下が問題になっていますが、水素は再び日本が輝きを取り戻せる可能性を秘めた産業です。「日本の特許は少数の企業や組織に集中しており、優れた技術を事業化しやすい環境にある」と言われています。
8「電解法には水が重要」
グリーン水素の大量生成には、安価な再生可能エネルギー由来の電力とともに、大量の良質の水が必要です。「アルカリ型水電解装置」には、KOH(水酸化カリウム)と隔膜が使われます。「固体高分子型水電解装置」には、純水とイオン交換(ナフィオン膜)を使用します。海には大量の水があるのですが、そのままでは使えません。
✴✴✴✴水質が重要✴✴✴✴
どちらの方法も種類は違う膜を使用して生成される水素と酸素を分けて回収します。水に、イオン化したNa+、MG+、K+、Ca+などが含まれていると、膜に付着して劣化し、効率が一挙に低下します。そしてすぐに水素生成ができなくなります。
日本の河川水はかなりきれいなのですが、それでも濾過して純水にしなければなりません。
✴✴✴✴ソリューション✴✴✴✴
この課題の解決に向けて研究が進んでいます、①汚れた膜の回復、②設計による隔膜劣化を防ぐ、③膜を使用しない電解技術、④不純物に強い膜の開発、⑤ローコストの純水製造技術などです。
①の汚れた膜の回復は大学の研究室で取り組まれています。②の設計技術は、トクヤマ・旭化成で実用化が進んでいます。③の膜を使用しない方法は、イスラエルの研究所で開発され、日本の自動車メーカーが支援しています。④の不純物に強い膜の開発は、ベルギーのフィルムメーカーが開発したとのことです。⑤のローコストの純水製造技術は、日本が優位な技術です。多くのメーカーが独自の製品を製品化しています。
✴✴✴✴水を守る✴✴✴✴

技術開発に期待しますが、それ以上に私達には日本の水を守る使命があります。きれいな水の世界ランキングは、1位アイスランド、2位オーストラリア、3位日本です。このきれいな水が日本にあるから、IC技術などを発達させてきました。ちなみにきれいな水の県別ランキングは、調査によって少し変わりますが、長野県、熊本県、徳島県、鳥取県、青森県だそうです。いずれも精密機器やIC産業の立地です。
これらの地域に共通しているのは、広い山林に降る雨の伏流水が豊富なことです。降った雨は樹木の成長を助け浸透し、10年20年と「ろ過」されて湧き出てきます。
技術が進歩しても、元の水質が良いことは大切です。日本の良質な水を守る努力が求められています。
9「CCSとCCUS」
いまNEDOによる「褐炭水素プロジェクト」が進められています。褐炭とは、水分や不純物などを多く含む、品質の低い石炭です。輸送効率や発電効率が低く、さらに乾燥すると自然発火するおそれもあるため、近くにある火力発電所でしか利用できないなど、そのため国際的にも取引されていない安価なエネルギー資源です。 オーストラリアのビクトリア州には、こうした褐炭が日本の総発電量の240年分に相当する量が存在していると見られています。NEDOとJETROが中心になって、川崎重工業、電源開発、岩谷産業、丸紅、住友商事など、多くの企業がこのオーストラリア「褐炭水素プロジェクト」に参加しています。画像:資源エネルギー庁
✴✴✴✴褐炭から水素✴✴✴✴

褐炭を細かく砕き、酸素とともにガス化炉で1,000度以上に加熱すると。 炭素が水分や酸素と化学反応し、水素と一酸化炭素になります。 さらに一酸化炭素は水蒸気と反応させることで、水素(H2)とCO2に転換します。このままではブラウン水素です。そこで排出した二酸化炭素を、貯留したり他の用途に変えることで、ブルー水素になります。それが「CCS、CCUS」です。
✴✴✴✴CCSとCCUS✴✴✴✴

「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。「褐炭水素プロジェクト」では、地中深くに貯留・圧入するようです。
「CCUS」は、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留したCO2を利用しようというものです。脱炭素化技術にはいくつかありますが、もっとも有望視されているのは、水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を反応させ、天然ガスの主な成分であるメタン(CH4)を合成する「メタネーション」です。
メタンは燃焼時にCO2を排出しますが、原料として、回収したCO2を利用すれば、燃焼時に排出されたCO2は回収したCO2と相殺されるため、大気中のCO2量は増加しません。つまり、CO2排出は実質ゼロになるわけです。画像:東邦ガスのHPより
✴✴✴✴2050年に天然ガスを合成メタンに✴✴✴✴
メタネーションは、「次世代熱エネルギー産業」に位置づけられ、成長が期待されています。2050年時点で、天然ガスの90%(年間2500 万トン)を合成メタンに置き換える目標です。
今後の課題は、設備の大規模化と水素とCO2を安価に調達することです。
10「未来の燃料」
これまでの石油や天然ガス等の化石燃料にかえて、燃焼しても大気中にCO2が増加せず、カーボンニュートラルを実現する燃料の1つがCO2と水素からできる合成燃料です。
✴✴✴✴次世代の燃料の課題✴✴✴✴
社会には多様なエネルギー源が必要です。次の4つの課題のクリアが求められます。
- 大型かつ長距離の輸送は、蓄電池や水素だけでは実現が難しい。
- 産業分野で必要な熱エネルギーのなかで、電化だけでは対応が難しい温域も存在する。
- コスト面や移行期間を考えると、既存の設備を活用できる燃料が普及には役立つ。
- エネルギーの安定供給や災害時対応を見越した製造・供給・備蓄体制が求められる。
✴✴✴✴バイオマス航空燃料✴✴✴✴
持続可能な航空燃料には、廃食油等を原料にする技術、バイオエタノールから触媒等を用いて航空燃料に改質する技術、木くず等の有機物を原料にする技術等があります。航空エンジンメーカーは、すでに開発に着手しています。
✴✴✴✴CO2を資源にできる合成燃料✴✴✴✴

合成燃料は、CO2と水素を原料として作ります。製法によって、液体燃料と気体燃料をそれぞれ作ることができます。エネルギー密度を高くできるので、長距離輸送を可能にする燃料です。再エネ由来の水素を使った場合は、e-fuelとも呼ばれます。
ボイラー等の産業用装置で必要な高温域の熱源を作るための気体燃料「合成メタン」は、天然ガスの主成分と同じです。CO2と水素から作られる「カーボンニュートラルLPガス」も、LPガスの代わりに使うことができます。
✴✴✴✴エネルギーの安定・安全保障✴✴✴✴
CO2等を活用したカーボンニュートラル燃料製造は、CO2排出量削減だけではありません。災害時対応やエネルギーセキュリティの観点でも役立ちます。
災害時の燃料拠点としても機能しています。ここで合成燃料の供給ができれば、全国各地で災害時の燃料供給を継続することができます。
すべてを自国で製造し、貯蔵できるようになれば、エネルギーの安全保障に貢献します。
******************************************************************************************************再生可能エネルギーの情報を「Perovskite Energy Report」でお届けしています。無料購読申込みは、Perovskite Energy Report申し込み にご登録ください。
コメント