根本 博 氏
行政書士ねもと法務事務所
行政書士
宅地建物取引主任者
敷金診断士

注意
このコラムが書かれたのは、10年前です。現在の制度と違っているところがあります。その点についてはご注意ください。
国による太陽光発電単体設置による補助金制度は廃止
2021年度以降に国による太陽光発電単体での購入や設置、関連機器類の補助金制度はありません。正確には既に補助金制度が廃止となっています。
国による太陽光発電の補助金制度は2014年に終了し、その後も太陽光発電の設置や購入に関する補助金制度を立ち上げていません。ただし近年では、国が推進しているZEH住宅および支援事業で、太陽光発電に関する補助金を受けられる可能性はあります。なお、ZEHとZEH関連の補助金制度は後述します。
家庭用蓄電池の補助金制度に関しては、条件付きで実施している場合があります。VPPという太陽光発電システムに関する実証実験に協力すると、設置費用に対して補助金を受けることができます。
他にも「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」は、家庭用蓄電池の導入時に補助金を受けることができましたが、これも2020年度までで廃止となっています。
しかし、2021年になって新たにDER補助金(DR補助金)という蓄電池に関する補助金の要項が発表されました。DER(DR)と呼ばれる分散型エネルギーリソースを活用した次世代技術構築実証事業を活用することで、家庭用の蓄電池設置に国(Sii)から補助金が出ます。
このDER補助金(DR補助金)というのは既に太陽光発電が設置済み、もしくは太陽光発電と同時に蓄電池を設置される方が対象となっています。つまり、蓄電池の単体のみや太陽光発電単体のみでの補助金制度は廃止されたものの、今太陽光発電を設置していない方で蓄電池を合わせて設置する場合であれば、補助金は出るということになります。太陽光発電と蓄電池が複合したような補助金というイメージが適切な表現といえます。2024年度以降もこのDER補助金(DR補助金)は続くので、太陽光発電単体の補助金が廃止されたからと言って諦めるのはまだ早いです。
太陽光発電の購入・設置時の補助金について
太陽光発電の購入・設置時の補助金について、その内容や申請手続き方法、及び付属情報も交えて解説させていただきます。
2011年3月11日の東日本大震災での福島の原発事故により原発の安全性が問われ、今後の日本のエネルギー政策をどう考えていくのかは大変難しい問題となりました。その中でエネルギー供給のベストミックスを考える上で、今後再生可能エネルギーとして太陽光発電を切り離して考えることは難しく、更なる需要が見込まれるものと考えられます。では、先ず初めに太陽光発電システム(以後、システムと略す)補助金申請件数等の現状と全体像を見ていきます。
申請件数
平成23年度全国補助金の国に対する交付申請件数は約30万件で、そのうち約77%の補助金交付が行われております。東京都を見てみると年間約1万5千件で、そのうち約76%の補助金交付が行われております。申請件数は愛知県が1位で年間約2万3千件弱、続いて埼玉、東京、福岡が上位となっております。
交付機関
補助金交付機関は、国・都道府県・市区町村があり、都道府県・市区町村では交付金額に違いがありますが、合計すると自己負担額を減らすことができます。
補助金以外
補助金以外で一般の融資より低金利で利用できるソーラーローンと言うものが有ります。これは、金融機関によって違いは有りますが(取扱いの無い金融機関有り)システム導入に限って低金利で利用できる銀行ローンです。
このローンの返済について、システムで発電した電気を売電することで得られる売り上げ(売電価格42円/kWh(平成24年度時点))を充てれば、補助金とあわせて利用することで自己負担額は軽減されるものと考えられます。
その他
一般家庭でシステムを導入すると、費用は一般的なモデルケースとして約200~250万円前後必要となり、この一部を補助金・ソーラーローン等で賄うことができます。
次に、補助金の交付を受けるのには、補助金申請時期や交付時期(システム設置完了後3~5ヶ月後交付)、補助金交付対象機器、工事施工前・中・後写真、自己必要初期準備金など幾つかのハードルがあります。又、補助金の交付は予算が決まっており、交付金が無くなり次第、年度終了を待たず終了となります。
平成25年度の補助金
※ 平成25年度の補助金対象販売単価と、売電価格が発表されました。昨年度(平成24年度)からは変更されていますのでご注意下さい!又、平成24年度の補助金申込みは、平成25年3月29日(金)で締め切られました。よって、以下、平成25年度版となります。
※ 最初に記しましたように太陽光発電の補助金は廃止されています。
(平成25年度・住宅用)
1kW当たりの補助対象経費 | 1kW当たりの補助金単価 | 1kWhの売電価格 |
410,000円以下 | 20,000円 | 38円 |
500,000円以下 | 15,000円 |
1.補助金交付機関
システム導入時の補助金交付機関は3機関あります。
(1)国。(2)都道府県。(3)市区町村です。
この中で交付金額が全国共通なのが(1)国からの補助金で(2)と(3)は交付金額に各々違いが有ります。
又、(2)と(3)は各々役所に申請となりますが、(1)の国だけは、経済産業省(旧通産省)などの役所ではなく、一般社団法人太陽光発電協会J-PEC太陽光発電普及拡大センターという機関に申請となります。
2.補助金申請条件
(1)補助金利用者資格
- 住居に太陽光発電システムを設置し、電力会社と売電が出来る契約を結ぶこと。
- 個人(個人事業主を含む)
※排出削減事業への参加が必須。
- 法人
- 管理組合の管理者
等です。
(2)補助金申請手続き資格
- 手続き代理者(行政書士)
- 手続き代行者(要登録)
3.補助金交付対象システム
どのような発電システムでも良いわけではなく、補助金交付対象システムや、発電能力と販売単価に制約があります。
(1)住宅用のみで、発電能力10KW未満。
(2)販売単価が1kW当たり50万円以下。
(3)J-PECに登録されているシステム。
となっています。
4.補助金額(上記表参照)
(1)発電1kW当たり販売単価50万円以下。この時の補助金額は1kW当たり、1万5千円。
又は、
(2)発電1kW当たり販売単価41万円以下。この時の補助金額は1kW当たり、2万円。
となります。
システム導入が決定してからの手順
システム導入が決定してからの手順について解説いたします。
1.契約後
契約を交わし設置工事開始することになりますが、J-PECへの補助金申込は工事開始の前にしなければなりません。
着工後に補助金申込書の提出をしても受け付けませんので注意が必要です。
補助金申込書の提出をした後、J-PECより「補助金申込受理決定通知書」が申込者に届き、この通知書に「受理決定日」が記載されています。
この「受理決定日」以降に設置工事が開始となります。建売りの場合は「受理決定日」以降の引渡しとなります。又、システム設置場所の設置工事開始前の写真が必要となりますので必ず設置前に撮影しておかなければなりません。この、写真撮影時期は、設置前、設置中、設置後と3種類必要となります。
ここで一つ注意点としては、システムが補助金対象になっているか再度確認をするなど注意が必要です。
全国の消費者センターに訪問販売における以下の様な相談が多数寄せられています。
- 売電価格の虚偽・曖昧な説明
- 補助金についての曖昧な説明
- 他商品との抱合わせ販売によるお得感の強調
- 限定」と言う言葉の使用説明により購買意欲を駆り立てる
- 長時間の居座り・説明、契約を急がせる
(例 価格は2009年3月時点)
訪問販売で、「国の補助金が受けられる」と説明され、太陽光発電システム(約450万円)の契約をした。補助金は、70万円/kwだが、契約書をみると90万円/kw(※)となっている。不安になり国の補助金の窓口に電話して問い合わせたところ、「対象にならないと思われるので、事業者と話し合うように」と言われた。工事が始まっているので、諦めるしかないか。
※国の補助金の交付条件として、税抜きでシステム価格が70万円/kw以下であるという条件がある。
等です。
上記具体例の金額等は平成21年3月時点のもので、平成25年度は、
- 住宅用のみで、発電能力10KW未満。
- 販売単価が1kW当たり50万円以下。
- J-PECに登録されているシステム。
と、年度によって金額等各数字が異なるので良く確認するようにしましょう。
契約内容(システム発電量等)が補助金対象外で契約解除をする場合、特定商取引法・消費者契約法によって解除が可能な場合があります。
特定商取引法・消費者契約法による解除については、改めて解説いたします。
補助金申込から補助金の受領までのながれ
J-PECに補助金申込書の提出をした後、書類到達日から概ね14日の審査を経た後、J-PECより「補助金申込受理決定通知書」が申込者に届き、その後にシステム設置着工となり、設置完了後に「補助金交付申請所(兼完了報告書)」をJ-PEC送付し、その後、補助金が交付されることになりますが、この一連の手続きには期限が設けられている事が2つ有ります。
1つは、設置工事期間です。
このシステム設置工事期間は、「補助金申込受理決定通知書」に記載された「受理決定日」から「電力受給開始(=完了日)」迄、新築は7ヶ月以内、既築・建売は4ヶ月以内となっています。
2つ目は「補助金交付申請書(兼完了報告書)」送付期限です。
「補助金交付申請書(兼完了報告書)」提出期限は「「受理決定日」から「補助金交付申請書」提出迄、新築は9ヶ月以内、既築・建売は6ヶ月以内となっています。 「補助金交付申請書(兼完了報告書)」提出期限については「補助金申込受理決定通知書」に記載されています。
「補助金交付申請書(兼完了報告書)」提出後、約1~2ヶ月に「補助金交付決定通知書」が届き、その1~2ヵ月後、全部で「補助金交付申請」してから4ヶ月以内に補助金の受領となります。
以上が補助金申込から補助金の受領までの大まかな流れとなりますが、手続き上の注意点をいくつか挙げてみます。
- 「補助金申込書」及び関係書類は、配達記録の残る簡易書留などで送付すること。
(※申し込みの審査に概ね14日かかる)
- 平成25年度の補助金申込締切り期限は平成26年3月31日(補助金申込額が予算の範囲を超えた場合は、その前日をもって申込受付を停止)。
- 「補助金交付申請書(兼完了報告書)」提出期限は、上記の期間(新築は9ヶ月以内、既築・建売は6ヶ月以内)、もしくは平成26年11月28日のいずれか早い日。
(※消印有効)
- 要保管書類
「補助金申込受理決定通知書」(受理番号が記載され、電力受給開始後の「補助金交付申請書(兼完了報告書)」の提出時に必要)
補助金交付申請所(兼完了報告書)」(控えコピー)
補助金交付決定通知書」
等です。
手続きをする上での注意点
前回迄、システム導入時の補助金申込から受理迄の流れをお話しました。
今回以降は、手続きをする上での注意点、その他の事項についてお話したいと思います。
1.手続き代理者・手続き代行者
第2回にも簡単に触れましたが、補助金の申請手続きをする者には、一定の条件が伴います。
- 導入者本人(※無条件)
- 行政書士・行政書士法人 = 「手続き代理者」
※委任状・資格を証明する証票のコピーの提出あり。
- 手続き代行者
J-PECに登録されたシステム販売店・設置業者等。(領収書が発行できること)
- 受任代行者
3.手続き代行者が領収書発行元にならない工事業者等に代行業務を委任する事が出来、この委任された者を「受任代行者」と言います。
「受任代行者」もJ-PECに登録が必要です。
「3.手続き代行者」「4.受任代行者」の登録手続き方法は、J-PECのホームページより書類のダウンロードが出来、必要事項を記入の上、提出となります。
登録申請が認められればJ-PECより登録番号が発行されます。
この登録番号を貰って初めて補助金の申請手続きが可能となります。
又、手続代行者登録をしている者が受任代行者として手続きを行う場合は、改めて受任代行者の登録は不要で、手続き代行者としての登録番号で受任代行者としての業務が行えます。
他、登録申請時の注意事項としては、
- 実務担当者は1人しか登録できません。
- e-mailアドレスが必ず必要。
- 登録代表者は、登録拠点の代表者(代表取締役や支店長・所長)の名前となる。
- 売買契約と工事契約が別々の場合、システムの販売者が手続き代行者となる。
等です
尚、1.導入者本人が申請される場合のみ、登録などの手続きは不要となり自身での申請手続きが可能では有りますが、書類の不備などにより期間経過などで補助金が受けられない可能性も出てきますので、十分な注意が必要です。
適切な手続きをするには、熟練者への依頼が確実と思われます。
設置後の売電
設置後の売電についてお話します。
補助金を受け取るためには自家消費して余剰分を売電することが条件となっています。
これは固定価格買取制度の基に行われており、太陽光発電(10kW未満)の余剰買取価格は、2013年(平成25年)度は、38円/kWhとなっており、個の価格での買い取り期間が10年となっております。10年経過後は買取電気事業者と話し合いで決めることになっています。
この買取価格ですが、一時期価格が倍になったことも有りますが(2009年)、設置年度が2009・2010年度は48円/kWh、設置年度が2011・2012年度は42円/kWh、そして、2013年(平成25年)度は38円/kWhと、下がって来ています。以前と比べるとシステムの普及も広がってきており、又、システム単価も下がって来ていること等を勘案すると、今後売電価格が上がることは基本的には考えにくいかと思いますが、円の高低で変わる可能性もあるかもしれません。
そして、電力会社と「電力需給契約」を結び余剰電力を買ってもらう訳ですが、電力会社が売っている電力よりも、ソーラーシステムで発電された電力の方が単価が高いので、この差額分を「再生可エネルギー賦課金」として全国民に負担してもらっています。
再生可能エネルギーで発電された電気は日々使う電機の一部として供給されているため、「再エネ賦課金」等として毎月の電気料金と合わせて徴収しています。
次に、この売電をする為には経済産業省から「設備認定」というものを受けなければなりません。
「設備認定」とは、「再生可エネルギー賦課金」として国民に広く負担してもらうのに相応しい発電所(太陽光発電システム)かを見極めるため国の認定が必要である、と言う事です。
設備認定基準は以下の様なものです。
- 調達期間中、導入施設が所期に期待される性能を維持できるような保障又はメンテナンス体制が確保されていること。
- 電気事業者に供給された再生可能エネルギー電気の量を計量法に基づく特定計量器を用い適正に計量することが可能な構造となっていること。
- 発電施設の内容が具体的に特定されていること(製品の製造時業者及び形式番号などの記載が必要)
- 設置にかかった費用(設置費用、土地代、系統への接続費用、メンテナンス費用等)の内訳及び当該設備の運転にかかる毎年度の費用の内訳を記録し、かつ、それを毎年度1回提出すること。ただし、住宅用太陽光補助金を受給している場合は不要。
- 既存施設のみ適用 既存の発電施設の変更により再生可能エネルギー電気の供給量を増加させる場合にあっては、当該増加する部分の供給量を的確に計測できる構造であること。
- パネルの種類に応じて定める以下の変換効率以上のものであること。(フレキシブルタイプ、レンズ、反射鏡を用いるものは除く。)
- シリコン単結晶・シリコン多結晶系 13.5%以上
- シリコン薄膜系 7.0%以上
- 化合物系 8.0%
- JIS基準(JISC8990、JISC8991、JISC8992-1、JISC8992-2)又はJIS基準に準じた認証(JET(一般社団法人電気安全環境研究所))による認証等を受けたもの。
- 余剰配線(発電された電気を住宅内の電気消費に充て、残った電気を電気事業者に提供する敗戦構造)となっていること。
- 逆潮防止装置があること(ダブル発電のみ適用)
等です。
認定の申請先は発電設備のある(取付けたシステム)都道府県を管轄する経済産業局へ申請します。
50kW以下のシステムでは、「電力需給契約」と「設備認定」の手続きは販売代理店が一括して行います。
1. 販売代理店等で設置システムの見積もり
↓
2. 経済産業省の設備認定を受ける(申請から認定まで約1箇月)
↓
3. 電力会社と電力需給契約を結ぶ
↓
(補助金申込書の提出)
↓
4. 設置工事開始
↓
完成
↓
5. 電力供給開始
↓
(「補助金交付申請書(兼完了報告書)」提出)
↓
(補助金の受領)
設置検討から補助金の受領までの大まかな流れは以上の様になります。
契約上のトラブル
2回で導入時の契約上のトラブルと解決方法についてお話したいと思います。
独立行政法人国民生活センターへの相談の具体的な内容をご紹介したいと思います。
● 事例1
20日前に、訪問販売で太陽光発電システム(3.33kw、約365万円)を勧められた。支払いが出来ないと断ったが、「この夏には※売電価格が2倍になり、毎月の収入が約25、000円位になるので、それで支払いをすることができる」との説明を受けた。節電すれば、収入にもなると思って契約した。 しかし、心配になって調べたところ、売電価格が2倍になるのは、夏ではないようなので解約したい。
(2009年5月)
※ 2009年10月迄は24円で、2009年11月~2011年3月迄の設置者は48円となった。
● 事例2
昨年秋に訪問販売で、「電気を電力会社に買い取ってもらえるので、月々の支払いは相殺され、実質負担は今までと同じ電気料金だけでいい」と説明を受け、太陽光発電システム(1.04kw)(約230 万円)を15年の分割払いで契約した。契約から数ヶ月経過したが、電力会社に買い取ってもらえる電気料金は、毎月400円から1,000 円の間だった。担当者の説明と大きく食い違いがあり、解約したいが、どうしたらよいか。 (2009年6月)
● 事例3
訪問販売で、「国の補助金が受けられる」と説明され、太陽光発電システム(約450万円)の契約をした。補助金は、70万円/kwだが、契約書をみると90万円/kw(※)となっている。不安になり国の補助金の窓口に電話して問い合わせたところ、「対象にならないと思われるので、事業者と話し合うように」と言われた。工事が始まっているので、諦めるしかないか。※国の補助金の交付条件として、税抜きでシステム価格が70万円/kw以下であるという条件がある。
(2009年3月)
● 事例4
2日前に見積もりを持って来訪した事業者に「太陽光発電を広めるため居住地域のデータを取得したいので、通常より安く販売できる。国と地方自治体の補助金が得られる」と勧誘され、太陽光発電システム(約280万円)を契約した。金額プランが高いものと安いものの2通りあり、高いほうならテレビ、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品をサービスすると言われ、お得だと思い、高い方を選んだが、国の補助金の条件に適合しないことがわかった。補助金の対象外であることを知っていて、高いほうの契約に仕向けたのではないか。事業者が信用できないので、解約したい。
(2009年7月)
● 事例5
電話があり、かねてから興味があった太陽光発電システムの説明を受けることにした。「屋根に太陽光発電システムをのせると、家庭で利用する電気をまかなえ、余った電気は電力会社に売電できる。さらに、自然冷媒ヒートポンプ給湯器とIH クッキングヒーターを設置すれば、電気代が安くなるので、売電量が増える。全部で約460万円だが、100 件限定で自治体から助成金が受けられ、10年でもとはとれる」と4時間説明され契約した。急がされた感じがする。解約したい。
(2009年6月)
● 事例6
「太陽光発電システムのモニターを探している」と訪問した事業者から、「半年間の光熱費の控えを提出してもらったり、写真を取らせてもらうとモニターの値引きがある」と勧誘を受けた。「特別設置条件値引きで約115万円引くが、この地域で5件だけであと2件しかない」と急がされ、太陽光発電システムと電気温水器、IH クッキングヒーターを購入した(総額約315 万円)。クレジット契約書の控えをもらっていないが、クレジット手数料を加えると400万円を超えると思うので、支払いが不安。解約したい。
(2008年12月)
以上の様な相談が寄せられています。要約してみると、
1 売電価格の虚偽・曖昧な説明
2 補助金についての曖昧な説明
3 他商品との抱合わせ販売によるお得感の強調
4 「限定」と言う言葉の使用説明により購買意欲を駆り立てる
5 長時間の居座り・説明、契約を急がせる
等です。
上記事例の様な場合の契約解除は可能か、又、可能な場合どのような手続きをすれば契約解除できるのかですが、契約解除をするのには「消費者契約法」・「特定商取引法」の活用が考えられます。
では、具体的な内容をお話しする前に、先ず契約とはどう言うものかについて簡単にお話したいと思います。契約とは法律上の拘束力を持つ合意で、簡単に契約解除は認められず、解除する場合は損害賠償等が発生します。又、契約の締結には「契約自由の原則」と言い、公序良俗に反しない限りその内容を自由に決めることができます。
しかし、「契約自由の原則」を貫くと、法律知識に疎い消費者にとって、著しく不利な契約も有効になってしまうと言う事態が考えられ、現実に上記例の様な事例が発生しています。
これを解消しようと存在する法律が「消費者契約法」と「特定商取引法」です。
消費者の為の法律
初めに契約について簡単にお話したいと思います。
第一に、契約とは法律上の拘束力を持つ合意で、簡単に契約の解除が認められるものではありません。
第二に、契約自由の原則と言うものが有り、これは公序良俗に反しない限り自由に契約内容を決めることができるというものです。
しかし、契約自由の原則を元に契約を結ぶと、法律知識に疎い消費者に著しく不利な契約も有効になって取消しが出来ず、消費者にとって不利益となる場合が有るのが現状です。
そこで、いったん結んだ契約でも、法律上の条件が揃えば、結んだ契約を無条件で取消し、又無効主張をすることを可能にして、消費者を保護しようと考えられたのが消費者契約法・特定商取引法です。
[1] 消費者契約法
消費者契約法は、契約の取消しを認め、法律違反の内容を含む条項を無効にするというのが主な内容で、次にお話しする特定商取引法の取消し期間の8日を過ぎていても、契約に至るまでの過程に問題が存在する時等は、消費者契約法によって取り消すことが可能となります。
例えば事例1の様な場合で、売電価格の虚偽説明があって契約した場合、消費者契約法の第4条及び第7条により、追認できる時から6ヶ月、契約締結のときから5年以内であれば取り消すことが可能であるといえます。
[2] 特定商取引法
法律の名の通り、トラブルの多い特定の7個の限られた商取引にのみ適用されることが規定されています。
特定商取引法は、一般に良く知られているクーリングオフが出来ることが書かれた法律で、契約を交わしてから一定の期間内であれば、例えば「気が変わった」と言うだけで契約の取り消しが出来るということが規定されています。
特定の商取引とは以下の通りです。
(1) 訪問販売
(2) 訪問購入
(3) 電話勧誘販売
(4) 通信販売
(5) 特定継続的役務提供
(6) 連鎖販売取引
(7) 業務提供誘因販売取引
ここでは、システムの販売形態で多い訪問販売についてお話します。
訪問販売で売買契約をした場合で、クーリングオフをする為の条件は、大まかに次の様な条件が必要です。
1. 契約の解除(クーリングオフ)が出来る説明を受け、その内容が書かれた書面の交付を受けているか。
2. 上記の書面の交付を受けた日から起算して8日以内かです。
以上の条件が揃えば契約の取り消しが出来るということになります。
ここで注意が必要なのは、「契約の解除が出来る内容が書かれた書面の交付を受けた日」が起算日になるので、例えば売買契約書は交わしたが、その契約書に契約の解除が出来る内容が書かれていなければ、契約をしてから8日を過ぎていてもクーリングオフをすることが可能ということです。
又、期間の計算で民法上は初日不算入となっていますが、特商法では書面の交付を受けた日が起算日となるので十分な注意が必要です。
(例)
1月1日に契約をして、同時に契約の解除が出来る内容が書かれた書面の交付を受けた場合、1月8日迄取り消すことが可能。1月9日ではクーリングオフは不可。
次にクーリングオフの手続きをする時は、必ず書面でしなければなりません。 この書面ですが、契約時にクーリングオフの説明と供に、クーリングオフするときはこの書類(又はハガキ等)を送る様にと、その手続き書類を契約書と共に渡される事が有り、手続き時にポストへ投函ということがありますが、後に、受け取っていない等のトラブルとなるので、内容証明郵便・書留で送るのが良いでしょう。
前回ご紹介した独立行政法人国民生活センターへの相談の内容も、この様な手続きを解決手段の一つとして、解決の道筋が見えるのではないかと思います。
以上、太陽光発電導入時の補助金申請から導入に伴うトラブルと契約解除までお話させて頂きました。
コメント