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瑕疵担保責任における期間制限と権利行使の実務

瑕疵担保責任(現在の民法における「契約不適合責任」を含む)における権利行使の起算点や期間制限については、単なる形式的な期間の経過だけでなく、瑕疵の内容や買主がその詳細を把握した時点などを考慮して、実態に即した限定的な解釈がなされるべきであるとされています。
ソースに基づいた具体的な解釈のポイントは以下の通りです。

1. 権利行使の起算点に関する解釈
瑕疵担保責任の期間制限がいつから始まるかという「起算点」について、判例(大阪地裁平成11年2月6日判決)では、単に不具合(クラックなど)を最初に発見した時とするのではなく、より実効的な時点を採用しています。
専門家による確認時: 弁護士の助言に基づいて専門業者に相談し、見積書の交付を受けた時を起算点として認めています 1, 2。
これは、買主が単に異常に気づいただけではなく、それが法的な責任を追及すべき「瑕疵」であることを具体的に認識した時点を重視しているものと考えられます。

2. 期間制限の性質と行使方法
旧民法下の瑕疵担保責任(570条・566条3項)における1年の期間制限については、以下のように解釈されています。
除斥期間(じょせききかん)としての性質: この1年の制限は「除斥期間」と解されます 1, 3。除斥期間とは、法律関係を速やかに確定させるために、一定期間の経過によって権利を消滅させる制度のことです 2。
行使の態様: この期間内に売主に対して担保責任を問う意思を、裁判外で明確に告げることで足りるとされています。つまり、期間内に必ずしも裁判を起こす(裁判上の権利行使)必要はありません 3。

3. 特約による期間制限の限定的解釈
契約書において「引き渡しから2カ月」といった、民法の規定よりも短い期間制限を設ける特約がある場合、その適用範囲は慎重に判断されるべきです。
限定的解釈の必要性: 特約によって短期間に制限される瑕疵は、雨漏りや給排水管の故障など、一般人が通常の注意を払えば一見して容易に発見可能なものに限定して解釈すべきだとされています 1, 3。
地盤沈下等の重大な瑕疵: 造成時の不備による地盤沈下や、それに伴う基礎のクラック、タイルの割れなどは、容易に発見できる瑕疵には当たらないため、期間を制限する特約の適用は否定され、原則通りの期間制限(旧民法では1年)が適用されるべきと判断されています 1, 3。

4. 民法改正による変化
2020年4月の施行により、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へと改められ、期間制限についても整理されました。
旧民法: 買主が瑕疵を知った時から1年以内に権利を行使する必要がありました 4。
新民法: 買主が不適合を知った時から5年間であれば権利を行使できるとされています 4。また、追完請求、代金減額請求、損害賠償、契約解除といった多様な権利が明文化されました 4。

(参考:権利行使のイメージ)この仕組みを「健康診断と再検査」に例えると、体の異変(クラック)に気づいた瞬間が起算点ではなく、再検査を受けて医師から具体的な診断結果と治療費の見積もり(専門業者の見積書)を受け取った時から、正式に治療や保険の請求期限がカウントされ始める、という考え方に近いと言えます。

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