不動産契約のトラブル

【コラム・論文】投資の危ない勧誘の手口 「サブリース」、「フルローン」、「フラット35」

20代で増加する投資用マンションの相談

 国民生活センターによると、投資用マンションに関する相談が20代の若者で増加しています。

国民生活センターに寄せられた相談は、以下のようなものでした。

  • 投資用マンションを購入をしつこく勧誘され、事業者が怖くて契約をしてしまった
  • 街頭アンケートに記入したら、投資用マンションを勧誘され契約してしまった
  • 家賃保証があると勧誘され投資用マンションを購入したが、赤字になっている
  • 事業者に指示されて虚偽申告し、ローン等を組んだが支払えない

投資用マンションの20歳代の相談件数と平均契約購入金額

出典/独立行政法人国民生活センター

投資マンションのブローカー殺し文句

 ブローカーは3つの殺し文句で籠絡するのです。その最初の言葉は、「あなたは属性が良い。一流企業に勤めているので、①フルローンでこの物件が購入できます。②リスクはほとんどありませんよ」そして、こう付け加えます。「③弊社が家賃保証します。それだけいい物件だということです」

具体的な事例をご紹介しましょう。

 東京都のある病院の内科医が上司からの勧めもあり、トータルで8件のワンルームマンションを購入したというものです。この医師のケースでは、「確定申告で赤字物件は調整で所得税の減税になる」と説明され、購入に踏み切ったといいます。結局、月々の支払いが滞り、地方病院でバイトをする羽目になりました。

「属性がいいからフルローン」

 属性という言葉を、ブローカーが顧客(投資者)をおだてるためによく使います。本来の意味は、マーケティングリサーチでは、年齢や性別、居住地、家族構成、職業、収入といった調査対象者の特性データのことです。

 この言葉で相手をくすぐりながら契約に結びつけます。実際は手付金が必要なのですが、ブローカーは金融機関の営業とのお金や書類のやり取りで表面上「フルローン」に見せかけています。その際、審査を通りやすくするため、源泉徴収票などを改ざんし、収入を水増ししていた事例もありました。

「サブリース」

 サブリースは、本来は船会社の仕組みから生まれた言葉で、1980年代に不動産賃貸で使われるようになりました。あたかもずっと家賃保証がされると思い込ませるために使います。借地借家法第28条では、家賃保証せずに解約することも可能です。

 よくある事例では、サブリース契約をして数ヶ月は家賃が支払われるのですが、ある日突然「サブリース契約の解除通知」が郵送されます。驚いた投資者が電話しても相手はでてきません。しばらくすると会社そのものが消えてなくなってしまいます。

「フラット35の悪用」

 この制度は民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する最長35年の全期間固定金利の住宅ローンです。 自ら居住するための住宅取得に対し、住宅金融支援機構と提携した民間金融機関が融資するものです。つまり、物件投資は融資条件の対象ではありません。

 しかし投資目的で融資を画策したブローカーにより、不正融資が行われていました。住宅金融支援機構は、不正の疑いのある113件について調査や借り手への面談を進めています。業界内ではこうした不正行為は数千件以上あると言われています。

勧誘された際、相談者(購入者)の共通点

  • 【購入者の知識不足】
    • 購入物件は契約前に現地に行き、場所・環境等を確認しなかった。
    • 自らが、不動産や金融について学ぼうとしなかった。
    • 購入したいといく気持ちが先走り、立ち止まって考えない。
  • 【販売業者の不自然な言動】
    • 不動産業者は、資産形成の話を良くしていた
    • 家賃の振り込みは融資銀行の口座に行うように言われた
    • 売買契約は、不動産業者の事務所ではなく喫茶店等で行った
    • 売買契約時、売主や司法書士の同席はなかった
    • 売買契約時に、銀行の営業担当者が立ち会っていた

危ない不動産会社の見分け方

 一概には言えませんが、スルガ銀行の事案でもあったように、こうした危ない業者(ブローカー)の宅建免許番号は「○○○県知事(1)第000000」の数字が(1)ということが多く、急遽、設立したように思える会社で、一定期間が過ぎると、雲隠れし、数年後にまた新会社を設立するし、同様の手口で、ビジネスをしているようです。

 会社に勤める一般投資家が不動産投資する目的の多くは「賃貸マンションのオーナーになり、将来の安心を得る」ことにあります。その動機は「家族のため」「老後の安心」といったことで、そこを言葉巧みに付け込まれてしまうようです。そして、業者から「あなたは属性がよいから、自己資金なしでも融資が受けられる」とおだてられ、物件を見ずに買ってしまうのです。

一旦立ち止まって考える

  • 数千万円の投資(買い物)である以上、家族や第三者的な専門家に相談する、
  • 自分の目で物件を見る、物件の周辺を実際に歩いてどんな町で、周辺の物件の物件相場や家賃相場を調べる
  • 焦って買うのではなく、いま一度立ち止まって考えることが必要です。

以上

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